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やっぱり私、走るのが好きだ!未来予報ハシレルヤ

【製品レポ】Evoride orphe【未来ずら~!】

今回の内容です。

製品のメリットデメリットについて知りたい方は、ほめたいところ、から読まれるのを推奨します。

 

 

導入

ラソン競技のタイム短縮には、(ざっくりと)以下の2つが重要であるらしい。

  • VO2max, LTをはじめとする生理学的数値の上昇
  • ランニングエコノミーの改善

後者に取り組む為に世にはたくさんのドリルがあるが、特異性の原則を踏まえると競技の動きは競技中に練習せねば改善できない。したがって、走行中に理想の動きを意識し自身の走りと理想をすりあわせる必要が出てくる。自分の体を思い通りに動かせる戦闘民族達にはBreaking twoを目指してもらうとして、普通は自分がどう体を動かしているのか、どう走行しているのか、正確に認識することが難しい。なのでコーチなり練習仲間からフィードバックを受けよう、ということになる。

しかし、住んでる地域や某感染症の流行等さまざまな事情により、フィードバックを受けることが難しい人が多いのではないか。また、"理想の動き"についても巷にある情報は玉石混合で危険だ。つまり、ランニングエコノミーの改善には障壁だらけの道を歩むことになる。

が、技術の進歩は素晴らしい。

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『未来ずら~!』幼少期の国木田花丸もこの製品を見ればそう言うに違いない。

ASICS × No new folk studioより発売されたEvoride orpheはマラソンに取り組む万人に、目の前に広がっている障壁を取り除いてくれる製品だ(だろう)。

Evoride orpheはあなたの走りを計測する

細かいことはググってもらうとして製品の理解には動画を見ていただくのが早い。

www.youtube.com

川内選手による松岡修造ばりの激励が飛んでいるが、もちろんそういう製品ではない。 

(製品概要のまとめ)

  • スマートシューズのメーカーであるNo new folk studioとランシューのビッグメーカーASICSが手を組み、スマートシューズ『Evoride orphe』を発売した。
  • 同製品は靴底にセンサーを取り付ける形で機能し、"わたし"のランニングを以下の項目にて可視化してくれる。
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    (他にもキック効率やねじれの負担軽減度などを算出してくれる)
  • 計測されたデータをASICSの持つデータより導出される”理想の動き”と照らし合わせ、リアルタイムにアドバイスをくれる。目指すのはダイナミックで、効率の良い、負担の小さな走り。
  • 走行後には走りを採点し、効率改善へのドリルや筋トレを提案してくれる。

と、製品紹介だけ見ると『こんなこと出来るようになったのか!』と驚くしかない、まさに”スマート”な製品である。導入にて挙げた問題点を1製品で解決してくれるのだ。

購入にあたっての個人的なモチベーション

  • 単純に面白そう。自転車の世界にはペダリングモニターというものが存在するがマラソンの世界には存在しない。EVORIDE ORPHEがマラソン界のペダリングモニターとなると期待したため。
  • ↑のように考えていたので、パワー測定できるんじゃね?と期待した
  • もう二度と故障したくない!という思いから。ランナーが良くやる故障に『腸脛靭帯炎』があり、僕も実際に経験した。いろいろと試行錯誤を重ねたが、結局重要であったのは休養と生活習慣の改善のみ。原因にはランニングフォームの悪い癖があるはずなのに……と思っていたが、ネットを見ても要領を得ないアドバイスばかりだった。病気で一番重要なのは予防である。同製品にフォームの悪い癖を指摘してもらおうと思っていた。
  • 基本ソロ練なのでセルフコーチング・モニタリングのシステムはひとつでも多く取り入れたい。

実際に買ってみた ~ セットアップまで

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わー、来た。心のそこから望んでいたぞ。箱に傷がついてたりとへこんでたり、ちょっと気になる。……僕がしばらく受け取れない間に付いた傷だろうな。ごめんよ佐川のお兄さん。

箱は黒 + 金。高級なイメージを醸し出したいのだろうな。実際高かったし…
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箱を開けると、最初にぼくを待っていたのは靴以外の何かが入っているであろう薄い箱。

たとえば電子辞書やゲーム機などを考えてみると、こういう薄い箱には高価な機器が入っていると相場が決まっている。なので、見るとワクワクする。

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ぱかり。箱を開けるとセンサー一式と説明書、製品概要書が入っていた。やっぱりね。読みは正しかった。このセンサーが僕の走りを検知してくれる訳だ。

入っている説明書を読みながらセットアップしていく。わかりやすい説明で難しい作業を必要としないので、識字率の高い日本では問題は起こらなさそう。
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さらに開封すると特別カラーのエボライドちゃんとご対面。お世話になります。思ったんだけどロボットアニメだよねこのカラーリング。黒と金。ユニコーンガンダムにたしかこんな感じのカラーリングがあったような…?

さて、肝心のセンサーの設置位置。上でも書いたが、靴底にセンサーを取り付ける形で機能する。
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インソールをのけると真ん中に設置位置があり、差し込むような形でセンサーを入れる。本当に簡単です。

アプリのセットアップも簡単。
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アプリをApple Storeから落としてログインするだけ。ログインして1分くらいごちゃごちゃ性別、身長、体重などを設定するともう使えるようになる。アプリの操作自体は非常に簡単なのでGarminが使える人なら苦労しないと思う。

自転車パワーメーターだとキャリブレーションだの難しい手続きが沢山必要だそうなんですが、EVORIDE ORPHEは一切要らない。センサーを入れてスマホに繋ぐだけ。

 

さて、ここから使ってみた感想を述べてたいと思います。 欠点が多めに書いてありますがその大部分は些細なものなのであまり気にしないでください。

ほめたいところ

  • そもそも靴自体が優秀である。

    ソールに穴を開けてセンサーを入れているので、走行時の感覚が変わることをまず心配していた。しかし、その心配は杞憂で使用感に大きな変化はなし。Evorideの正規品と比べてややクッションが柔らかい気もするが、あくまで”気がする”程度。明確に違うとは思わない。どうやら、ASICSさんはセンサーを取り付けるために靴の構造を再設計したんだって。だからこんなにも自然なのね。Evorideのコロコロと転がっていく感覚が好みなのは言うまでもない。
  • ランニング中にフィードバックを貰える。項目は自由自在に設定できる。

    本製品の最大のウリであるリアルタイムのフィードバックは、計測したデータの報告 + 導き出されるアドバイス (1つ)から構成されている。項目は以下のスクショに掲載。
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    見てわかる通り、報告する部分を自由に設定できる。よって、その日集中して取り組みたい項目にのみ絞って教えてもらう事が可能だ。また、ランニング後にはブレーキ効率やキック効率などを算出してくれるが、現在のブレーキ効率は~%です、等々のすぐには分からない数値がハナからカットされてるのは良く考えられているな、と思う。

    また、アドバイスのレパートリーにはもっと量があるだろうが、ぼくがよく言われるのは『上向きに蹴りだしている』『着地の衝撃が大きくなっている』の2点。上向きに蹴りだしている癖は知らなかった。この製品で新しい気づきを貰う事を期待していたので、まさにそれが欲しかったんだよ!という感じ。
    また、ここについても良く考えられていて、1回のアナウンスにつき1個のアドバイスしかなされない。走っている最中に『ここと、ここと、ここと、あとあそこも……』と言われても覚えていられない。現在の一番大きな問題を指摘してくれる。実際に基づいてるなぁ~、と思ったのだった。
  • ランニング後のフィードバックは包括的であり、細かいところに手が行き届きている。

    フィードバックを貰えるのはランニング中だけではない。ランニング後には、より詳細なフィードバックを貰う事ができる。
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    例えば僕の総合評価。A~Eまでランクがあるようで、僕はランクB。このレーダーチャートを読むことで走りにブレーキがかかりがちなのだな、と知ることが出来る。また、基本的にリアルタイムのフィードバックは1つだけなのだが (⇔ 走っている最中に多くの事を言われても取り組み難いので) 、問題点はいくつも有るのでラン後に教えてもらう事で、より立体的にフォーム改善に取り組むことが出来る。
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    また、さまざまな指標の経時変化も記録されている。レースを走って疲れてきた際に、フォームがどう変化していくか、どちらの足が弱いのか (筋力を付けてあげるべきなのか) 気づくことが出来る。
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    そして、フォームを改善するためのドリルや筋トレの紹介。世にはたくさんの改善方法があるが、忙しい社会人に全部取り組め!と言われてもムリ。ひとつに絞って教えてくれるのは賢いね。僕は腸脛靭帯炎はやりたくないので、タオルギャザーを取り入れました。
  • 初回投資のみで、以降はお金がかからないと予測される。

    形式上そのようになっている。今までと同じで、靴が朽ちてきても新しい靴を買えばいい。

よくないところ

★★★ 重要な問題となりうるもの

  • 走行中にスマホとセンサーの通信が途切れる。

    走っていてリアルタイムのフィードバックが流れないな、と思い調べてみるとセンサーからのデータがスマホに飛んでいなかったみたい。届いてから2回程使って、2回とも同事象が発生したので通信の強度がそんなに強くないのかな。もしかして、僕の走りがその時は満点だった?

★★☆ 重要ではないが気になる

  • 防水ではない。 (訂正)防水です!

    熱心なランナーなら雨の日も走りますが、防水でないのは痛い。商品仕様に記載はなかったが、防滴くらいの仕様だと聞いたような。
    (11/29 追記訂正) Makuakeのサイトより
    Q. センサーは防水ですか?
    A. はい、防水です。防水性能はIPX7(JIS/IEC規格)に準拠しておりますが、水に浸かる状態でのご使用はお避けください。

  • なぜEvoride。

    僕はEvoride好きだが、ASICSでポピュラーなモデルと言えばKAYANO。このあたりに搭載するべきなのでは?

  • バッテリーがどれくらい持つのか不明。 (訂正)7時間持続するようです

    twitterにおける他ユーザーの意見を見るとフルマラソンは走り切れなさそうである…。
    (11/29 追記訂正) 連続稼働時間:約7時間とMakuakeのサイトには在りました。なのでフル充電で挑めばフルマラソンは走り切れそうですね。ウルトラは無理そうですが、ウルトラでこの製品を使うようなユーザーはなかなかいなさそう。

  • インソール変えていいの?

    ランナーの中にはカスタムインソールを用いている人も多数いるはずで、インソールを変えてもいいのだろうか?センサーは靴のゆがみを検知しているわけではないので、ソールを変えても機能しそう。

  • パワーの測定ができない。

    システム的にデキそうなのだが……Garminのランニングpodは加速度計からパワー測定しているから出来るでしょう。最も、マラソンのパワトレにどこまでの意味があるのか不明だが

 

★☆☆ ユーザー次第でなんとでもなるもの

  • アドバイスが曖昧。

    上向きに蹴りだしてる、と言われて俺はどうすりゃいいねん!という気持ちになる。当然だが改善する方法は自分で考えなければいけない。もっとも、コーチや友人のアドバイスが感覚的すぎてわからない、というシチュエーションにはよく遭遇するので、本質が変わらない…

    (そのためのドリル・筋トレだが、筋トレのような筋力不足という明確な原因があるものは別として、ドリルにどこまでの効果があるのか不明。おそらくドリルは感覚を掴むことが重要なのだろうが、漫然と言われたことだけやっていれば良いと思う人にはいつまで経っても改善しなさそう)

  • 1分おきのアナウンス。

    うるさい。全項目をアナウンスする設定にするとずっと機械音声が喋っている状態になる。笑えない。が、アプリで間隔を変えることができるので解決できる。

  • アプリのGPSがあんまり信用にならない。

    Garminとのズレがかなりあるので信用していない。ということは距離のアナウンスは無駄ということになるのでオフにできるようにして欲しい。

  • 機械音声のアナウンスが無機質。

    声優さん起用しませんか?オタクに売れるよ。

  • いちいちソールを外して充電するのはややめんどくさい

総評

導入にて、ランニングエコノミ―の改善に挑むにあたって多くの人が抱える2つの問題があるだろう、と述べた。

  • フィードバックを貰う事ができない。
  • 理想の走りとは何かわからない。

本製品はそれぞれの問題について解決策を提示した。まず、センサーを搭載することであなたの走りを計測する。次に1000人の走りというデータから導き出される理想の走りとの比較を行う。そして出てきた問題点を使用者にフィードバックする。
エコノミーの改善に挑むにあたって、素晴らしい製品である。

また、本製品は、モチベーションを掻き立てるという点でも優秀である。血圧や血糖を具体的な数値で示されると危機感が湧くように、走りも明確な数値にして示されると改善しよう!という意欲が湧くものである。たとえば僕の様に『プロネーションが激しいよ!このままだと故障するから、タオルギャザーで足底の筋力を改善してね!』といわれると、ラン後のサブ的トレーニングに対しても熱心になる。

 

細かい部分を見るとまだまだ発展途上の製品だが、買ってよかったと思っている。

これからもよろしくお願いします。

 

fin.